ひとり株式会社設立体験記 第5話 by argon

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ひとり株式会社設立体験記 第5話
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※この一連の記事は、十年ほど前に私が独力で株式会社を設立した時の体験記で、一時期、ネットに公開していたものを少し手直ししたものです。十年ほど時間は経っており、時代背景が少し異なりますが、基本的な法制度は当時と現在でほぼ違いはありません。関心の有る方に参考にしていただければ幸いです。

# 会社設立後必要な届出書類の作成

設立登記申請はすみましたので、不備がない限り、あとは待っていれば登記は完了します。しかし、会社が設立できたからといって、これで必要な手続きは終わりではありません。会社設立後は税金関係の届出をしたり、銀行口座を開設したりしなければなりませんが、それらの手続きをするには、添付書類として必要な登記簿謄本・印鑑証明書を取らなければなりません。これらの手続きも、当然、平日に行わなければなりませんので、やはりまとめて1日ですませたいところです。

まず、登記簿謄本と印鑑証明書を取るには、それぞれの交付申請書を作成しなければなりません。また印鑑証明書を取るには印鑑カードが必要ですので、印鑑カード交付申請書も作成します。この3種類の申請書を提出すれば、印鑑カードの交付と同時に登記簿謄本と印鑑証明書を交付してくれます。以後は交付申請書とともに印鑑カードも提出しないと印鑑証明書を取ることができません。3種類の申請書用紙は設立登記をした際に持って帰っているので、それに記入して完成させます。法務省のサイトにある[こちらのページ](http://www.moj.go.jp/ONLINE/COMMERCE/11-2.html)に記載要領・記載例があるので、参考にしましょう。なお、このページからは申請書用紙の様式もダウンロードできますので、それらをダウンロードして申請書を作成しても構いません。請求通数ですが、登記簿謄本は7通くらい、印鑑証明書は4通くらい取っておけばいいでしょう。印鑑カードの交付は無料ですが、登記簿謄本と印鑑証明書の交付は有料で、交付申請書に登記印紙を貼付して支払います。登記簿謄本は1通あたり1000円、印鑑証明書は1通あたり500円です。登記印紙は登記所で販売していますので、申請書の提出前に購入して貼付すればいいでしょう。
次に、税務署への法人設立届を作成します。届出書の様式は国税庁のサイトの[こちら](http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_2.htm)からPDFファイルとしてダウンロードできます。これをプリントアウトし、必要事項を記入します。ファイルには記載要領もついているので、それを読みながら記入すれば特に問題はないはずです。わからないところは記入せず、税務署に持参した際に署員に相談して記入してもいいでしょう。税務署への法人設立届には、以下の書類を添付します。
* 定款の写し:会社保存の定款原本のコピーです。
* 登記簿謄本:当日、法務局で交付してもらう予定です。
* 株主名簿:自分で作成します。ダウンロードした法人設立届の記載要領の中に様式が示-れているので、それに似たものをExcelででも作成しましょう。
* 設立時貸借対照表:会社設立時の貸借対照表(バランスシート)です。会社設立時、すなわち、まだ何の活動もしていない時点のバランスシートですから、左側に普通預金、右側に資本金を記載するだけです。簿記の知識がないとよくわからないとは思いますが、見よう見まねで作れば大丈夫です。添付しなくても設立届は受け付けてくれるという話も聞きますから、これがうまく作れていないという理由で届が不受理になることはないでしょう。
* 設立趣意書:会社設立の目的や意義を説明した文書です。これはなくても構いません。すでに作ってあれば提出するというくらいでいいでしょう。私も提出しませんでした。
提出先の税務署は、会社所在地を管轄する税務署になります。各税務署の管轄区域は[こちら](http://www.nta.go.jp/soshiki/kokuzeikyoku/chizu/chizu.htm)で調べることができます。
ほかに税務署に提出する届けとして、以下のようなものがありますが、すべての場合に必須ではありません。私はいずれも提出していません。
* 給与支払事務所開設届出書:代表取締役である自分を含めて誰か1人にでも給料を支払う場合にはこの届けを出さなければなりません。私の場合は人は雇いませんし、私自身も当分のあいだ無給でやっていくつもりですので、この届けは出していません。税務署でも「給料を支払うようになったら出してください」と言われました。
* 青色申告の承認申請書:法人税の申告方法には、青色申告と白色申告があり、青色申告の場合には様々な義務を課されるかわりに税務上の優遇を受けることができます。青色申告を選択するには設立後3ヶ月を経過する日または設立年度末のどちらか早いほうの日までに、青色申告の承認申請書を提出しなければなりません。私の場合、まだ提出していません。期限はまだ先なので、今後、提出するかもしれません
* 電子帳簿の届出:帳簿類を紙の形ではなく、フロッピーディスクやCD-Rで保存する場合に必要な届出です。
* 減価償却資産の償却方法の届出:減価償却資産の償却方法には、定額法と定率法があり、そのいずれを選択するかについての届出です。届出しない場合には定率法を選択したとみなされます。つまり、届出を出さなければならないのは定額法を選択したい場合だけです。
* 棚卸資産の評価方法の届出:期末の商品や原材料などの在庫は、翌年度の販売用に持ち越されるので、その分の仕入れは棚卸資産として計上し、当期仕入からは控除します。この棚卸資産に値をつける方法(棚卸資産評価方法)には「個別法」「先入先出法」などさまざまな方法があり、どの方法を選択するかによって、棚卸資産の額、ひいては当期利益が大きく変わります。したがって、その方法を自由に選択できるようにしてしまうと当期利益を簡単に操作できることになってしまいます。これを防ぐため、棚卸資産評価方法をあらかじめ決定して税務署に届け出るようにしているのです。届出をしなかった場合は、最終仕入原価法を選択したものとみなされます。

会社が払う税金は国税だけでなく、地方税もありますので、都道府県税事務所と市町村役場にも法人設立届を出さなければなりません。それぞれの届出書は提出先でもらえるほか、都道府県や市町村のホームページから様式をダウンロードできる場合が多いと思います。私はそれぞれのホームページで様式をダウンロードしたものをプリントアウトして必要事項を記入しました。添付書類も都道府県や市町村によって違うようですが、多くの場合、登記簿謄本(コピーで可の場合もある)と定款のコピーの2点が必要なようです。なお、東京都の場合は、都税事務所への届出をすれば、区役所への届出は不要だそうですので、東京で会社を作る人は注意してください。

税務署・都道府県税事務所・市町村の3ヶ所に提出する法人設立届出書が作成できたら、いずれもコピーをとっておきましょう。このコピーも一緒に持参し、受領印を押してもらい、控えとして会社で保存します。
会社所在地を管轄する税務署・都道府県税事務所の場所も確認しておきましょう。また市町村役場内のどの部署が提出先かも調べておきたいところです。私の場合は、「理財局法人税務課」でした。

これで書類の作成は終了です。あとは銀行口座開設に向けた準備ですが、現時点で特にすることはありません。とりあえず、口座開設の際に提出が求められる登記簿謄本と印鑑証明書が不足していないか確認しておきましょう。

# 登記簿謄本・印鑑証明書の取得

法人設立登記申請をした翌週の水曜日が週休でしたので、この日に会社設立後の一連の手続きを済ませることにしました。設立登記は前日に完了しているはずです。

* 出発前の持ち物チェック
    * 印鑑カード交付申請書・登記簿謄本交付申請書・印鑑証明書交付申請書
    * 現金(登記印紙購入のため。必要金額 = 登記簿謄本請求通数×¥1000 + 印鑑証明書請求通数×¥500)
    * 税務署に提出する法人設立届出書および添付書類
    * 都道府県税事務所に提出する法人設立届出書および添付書類
    * 市町村役場に提出する法人設立届出書および添付書類
    * 銀行口座開設用の登記簿謄本・印鑑証明書、代表者本人確認用資料(運転免許証など)、会社実印、会社銀行印

持ち物を確認した後、スーツに着替え、髪も整え、ひげも綺麗に剃ってから、家を出ました。今回は先週と違い、銀行で口座を開かなければなりません。振り込め詐欺をはじめとする悪質な組織犯罪の増加の背後には、不正に開設された銀行口座売買の横行があり、銀行側も口座開設の際の身元確認を厳しくするなど警戒を強めています。変な格好をして行くと、詐欺師かテロリストか変質者だと思われて口座開設を断られるかもしれません(我ながら杞憂だとは思いますが)。

法務局に到着し、まず登記印紙を購入し、登記簿謄本交付申請書と印鑑証明書交付申請書に貼付しました。そしてこれら2つの申請書と印鑑カード交付申請書を窓口に提出し番号札を渡されました。しばらく待つと、私の番号が呼ばれ、無事、印鑑カードと登記簿謄本、印鑑証明書を受け取ることができました。

# 税務関係の届出

次に、税金関係の届出を順に済ませていきます。まず、法務局に一番近いのは市役所でしたので、市役所へ向かいました。そして理財局の中へ入っていき、法人税務課の窓口を見つけ、法人設立届出書2部と定款のコピー、登記簿謄本のコピーを提出しました。届出書のうち1部には受領印が押され、控えとして返却されました。これで市への届出は終わりです。次いで都道府県税事務所でも同じようにすんなりと手続きがすみました。最後は税務署です。玄関を入るとすぐに受付らしき職員の方がいたので、法人設立届を提出したい旨を告げると、「ここで手続きできます」とのことなので、届出書2部と添付書類を提出しました。そして、「私1人だけの会社で、当分私は給料なしでやっていく予定なんですが、この場合、給与開設事務所等の開設届出書は提出しなくていいですか」と質問しました。職員の回答は「それでしたら今は出す必要はありません。給料の支払いを開始するときに出してください」とのことでした。設立届は無事に受理され、受領印の押された控えも返却してもらいました。これで会社設立に伴う行政関係の届出はひとまず終わりです。

# 銀行口座の開設

さあ、いよいよ最難関(と私が勝手に考えていた)銀行口座の開設です。どの銀行に開設しようかという迷いもあったのですが、噂によると、都市銀行より地方銀行のほうが口座開設しやすい、とのことだったので、地元の地方銀行を選びました。税務署での届出をすませて歩いていると、その銀行の支店があったので、そこで口座開設することにし、中に入っていきました。実はかなりドキドキしていたのですが、それを表に出すと不審に思われるのではないかと考え、緊張を押し殺して意識的に堂々と振舞いました(我ながら自意識過剰です)。中に入ると案内役らしき女性がいたので、社長にふさわしい落ち着きを漂わせながら「法人口座を開設したいのですが」と話しかけました。女性はすぐに私を記入台へ案内し、口座開設申込書を取り出して、それに記入するように指示してくれました。申込書は個人口座用のものと同じものだったような気がしますが、実はかなりの緊張のためよく覚えていません。必要な記入と押印が終わったのでそのことを案内役の女性に告げると、「では、こちらへ」と言って、窓口に案内してくれました。そして窓口の女性に「法人口座の開設です」と告げます。窓口の女性は、私の記入した口座開設申込書を受け取り、「登記簿謄本と印鑑証明書はお持ちですか」と聞いてきました。私は社長らしい威厳をこめて「ええ」と返事し、謄本と印鑑証明を窓口の女性に手渡します。女性はさらに「法人口座開設の場合、代表者さまのご本人確認をする必要があるのですが、なにかご本人様確認資料をお持ちですか」と聞いてくるので、私は再び社長らしい鷹揚さで「はい。運転免許証でいいですよね」と答え、免許証を渡しました。女性は免許証を確認した上で、「ありがとうございました。免許証はお返しいたします。それでは手続きをいたしますが、口座開設のためにいくらかご入金いただく必要があるのですが」と言います。「ああ、そうですね。じゃあ、とりあえず1000円でお願いします」と、私は千円札を取り出し、女性に渡しました。「かしこまりました。では、おかけになってお待ちください」と女性に言われたので、ソファに腰掛けて待っていると、しばらくして私の名前が呼ばれ、窓口に戻ると、「株式会社○○○○ 代表取締役××××様」と書かれた通帳が置いてあります。無事、口座が開設されたのです。「本日は口座を開設いただきありがとうございました。こちらが通帳になります。カードのほうは作成に1~2週間かかりますので、後日、会社の住所へお送りいたします」女性の言葉を聞きながら、私は通帳をカバンにしまい、「わかりました。よろしくお願いします」と答え、ゆっくりと銀行を後にしました。

終わってしまえば、口座開設も大して難関でも何でもありませんでした。どうやら普通口座であれば、必要書類がそろっていて代表者の本人確認がきちんとできれば開設は容易なようです。口座開設から約1週間後、レンタルオフィスにカードも無事到着しました。また、ジャパンネット銀行の口座開設も申し込んだところ、こちらも、何の問題もなく開設できました。

以上で、株式会社設立体験記は終了です。少しでも何かの参考になれば幸いです。
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